幸せの鐘

「父親の方はもういない。」




いない・・・・




死んだ・・そういう事だよね?





「母親は俺達の監視の下
遠くの店に飛ばした。

これから先会うことはない。」





当たり前かもしれないけど
実の父親じゃなかった男と
実の母親でも私を人間として
扱わなかった母親がいなくなっても
何も寂しいって感じがしなかった





これで開放される・・



そう思うと気持ちが軽くなった。




だけど今の私は蒼汰君と一緒にいられない




「杏?大丈夫か?」



「蒼汰くん・・別れよう?」




そう言うと蒼汰くんは私をじっと見つめた。




「杏が今何を考えているのか分かる。

あの男にされた事気にしてるんだろ?」




蒼汰くんは全部わかってる・・



だから嫌われたくないし
私は汚れてしまった。




思い出すだけで吐き気がする・・




「自分の事を汚いとか思ってるんだったら
それは杏が間違ってる。

俺は、何があったとしても
杏を愛してる。」



どうして・・



突き放してくれないの・・?




蒼汰君を嫌いになれるわけない。


今でもすごく大好きで大好きで
別れようって言った自分が大嫌い。





「これから先もずっと杏しか愛せない。

だから別れようとか言わないでくれ・・」



「私も・・蒼汰君が大好き・・

でも、私・・」



「もう何も言うな・・

杏が苦しいなら吐き出せ。
俺が全部受け止めてやるから。」



温かい蒼汰くんの腕の中で
私は声を出して泣いた。




これでもかってくらい泣いて
蒼汰くんの服は涙でビショビショ・・

< 26 / 85 >

この作品をシェア

pagetop