無口な彼の熾烈な想い
゛俺は今鈴に何をしようとしてたんだ?゛

本人の同意もなしに、鈴に口付けようとしていたのか。

相手の意向を無視するなんて、絢斗の忌み嫌う母親と同じではないか。

自己嫌悪が絢斗を襲う。

だが、ぐったりと絢斗に身体を預けて眠り込む鈴を見たら押さえなんて効くはずはなかった。

それでも、絢斗はグッと自分の中の欲望と折り合いをつける。

絢斗は鈴の身体をそっと助手席に戻すと、その可愛い寝顔をしばらく見つめていた。

初めて見る寝顔は無防備で、でも男を誘うには十分な色気を放っていて。

こんな鈴を他の男も知っているのだろうか?

そう考えると、絢斗の心の中に言い様のないイライラと焦燥が込み上げる。

゛誰にも渡したくない゛

初めて感じるこの気持ちはまぎれもなく恋だった。

絢斗は鈴にそっと近づき額と頬にキスをする。

初めての接吻は鈴の起きているときに、もちろん同意を得た上で最高のシチュエーションでゲットしよう。

勝手に額と頬にキスをしておきながら、恋に落ちた身勝手な男の妄想は止まらない。

絢斗は来ていたジャケットを脱ぎ、鈴の身体にかけてやると、静かに車を発車させた。

静かな車内に、車のエンジン音と鈴の寝息だけが聞こえる。

絢斗は眠る鈴を見ながら、二人のこれからに思いを馳せた。

そしてはたと気付いてしまった。

明日は恋人たちのビックイベント。

クリスマスイブだということに!
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