無口な彼の熾烈な想い

ハッピーメリークリスマス

なんということだろう。

これまでそうした男女のイベントや営み?に興味を抱くことも、そんな心の余裕すらもなかった絢斗は、己の不甲斐なさと出来の悪さに頭を抱えた。

鈴に彼氏がいないことは、鈴の兄夫婦と綾香の謎の情報網から把握している。

しかし、鈴を惑わす不埒な男どもがいないということまでは把握できていない。

もしかしたら、明日はそんな男のうちの一人と約束をしているかもしれない。

何せ鈴はこんなに可愛らしくて賢くて優しいのだ(絢斗の当社比)。

気持ちは焦るが、確認しようにも当の鈴は寝ている。

とりあえずは鈴のマンションに到着するまでは起こすことも確認することもできない。

遠くにイルミネーションがキラキラと光るのが見える。

鈴と一緒に楽しめたならば喜びもひとしおだったに違いない。

しかし一人で見ている今はただの色のついたライトと何ら変わらない。

「見る者の気持ち次第でこんなにも印象が変わるんだな」

絢斗は鈴に出会ったことで、急に色づき始めた世界に驚き戸惑っていた。

゛だけどそんな自分も悪くない゛

絢斗は横で眠る鈴に再び目をやると、誰が見てもわかるように鮮明に笑った。

「逃がさないから」

笑顔を取り戻した絢斗の横顔は、他の誰よりも腹黒く野心に溢れていた。
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