無口な彼の熾烈な想い
「お先」

お風呂から戻ってきた絢斗は男の色気がだだ漏れで、鈴が直視できないレベルの尊さであった。

兄と同じスエットを着ているはずなのに男らしさと色気の度合いが全く違う。

同じ男性とは思えなくて戸惑うレベルだ。

サイズが合っていなくて滑稽なはずなのに、短めの袖と裾から出ている前腕の筋肉とふくらはぎが素敵すぎて目のやり場に困る。

そんな変態チックな筋肉フェチの鈴の気持ちをよそに、絢斗はズンズンと鈴に近づいてきた。

絢斗の濡れた髪の毛から薫る自分と同じ香りに胸がときめく。

『マカハンニャハラミタシンキョウ・・・』

鈴は頭の中で般若心経を唱えながら自我を保つのに必死である。

「わ、私もシャワー浴びてくるね。絢斗さんはこのドライヤーで髪を乾かしたらあちらのゲストルームでやすんでください。じゃあ、お休み」

言い捨てるように飛び出すと、鈴は一目散にお風呂場に消えた。
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