無口な彼の熾烈な想い

血の繋がり

カラン、カラン・・・。

動物病院のドアに取り付けているベルの音が鳴り響くと同時に、ゆっくりと入り口のドアが開かれた。

「こんばんは。ピーちゃんいますか?」

現れたのは3次元イケメン瀬口ではなく5,6歳くらいの可愛い女の子とその子の母親らしき美人、の二人であった。

「関口花菜です。五歳です。昨日、オスなのにピーちゃんが卵を産んだって本当ですか?」

花菜から発せられた、可愛いらしくも斜め上の質問に3人の獣医は楽し気に口角を上げた。

「ピーちゃんはメスだったから卵を産んだんだよ。赤ちゃんの時には男の子か女の子かを見分けるのは難しいからオスだと思われて花菜ちゃんちに来たのかもね」

と鈴は優しく花菜に告げた。

「花菜、カッコいいオスのインコが欲しかったのに」

と、不貞腐れたように呟く花菜はまだ命の尊さがわからない年齢なのだろう。

チラリと母親らしき人を見ると、眉間にシワを寄せながらも、次の瞬間には笑顔を浮かべて

「愚弟の突然の訪問を無下にせず、うちの大事なセキセイインコの命を救っていただきありがとうございました。この子が何と言おうと、ピーちゃんは私が連れ帰って面倒を見ます。お忙しい折にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

と言った。

この人は常識を持ち合わせている優しい人なのだな、と瞬時に判断し、鈴は嬉しく思った。

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