無口な彼の熾烈な想い
゛鈴の甘え方が可愛いすぎてつらい゛

突然の甘えん坊キャラのお目見えに、絢斗は思わぬ致命傷を与えられそうになり小さくウッと呻いていた。

ツンツンの高飛車な鈴も可愛いが、本当に嬉しいと思っているときの笑顔や天使のような優しい微笑みにも日々攻撃を受けていた。

しかし、初めて抱いた翌日からこの態度が見られるとは・・・。

絢斗は、鼻血が出そうな自身の鼻と口元を片手で覆いたいのを我慢し、しがみついて離れない鈴の背中をそっと抱き寄せた。

「そんなの、俺の方が好きに決まってる」

女ったらしも真っ青なクサイ台詞が自然と口に出る。

恥ずかしいが、それが嘘偽りのない正直な絢斗の気持ちだ。

取り繕って誤解されて鈴を失いたくはない。

ただでさえ周囲に誤解され続けてきた絢斗だ。

昨夜、鈴にだけは思ったこと感じたことを素直に伝えていこうと心に誓ったばかり。

恥ずかしくなどない・・・。

たぶん・・・絶対。

「お魚の煮付け?」

「ああ、それに味噌汁とだし巻き玉子だ。簡単なものですまない」

「材料がなくて申し訳ないのはこっちだよ。絢斗さんが謝ることじゃない・・・って、ねえ、長ったらしいからもう絢斗って呼び捨てしてもいい?年下なのに生意気かな」

突然の゛呼び捨てOKですか?゛の申し出に絢斗の心が沸き立つ。

女の子のように育てられた辛い過去の反動からか、絢斗は男らしさへの憧れが強い。

筋トレを欠かさないのもその現れだが、絢斗と呼び捨てにされるのはそれだけで男らしさが増すようで好ましいと思っていた。

「ああ、好きなように呼んでくれていい」

゛むしろ呼んでくれ!゛

日頃、感情表現の少ない二人だが、こうして分かりやすく口に出して気持ちを言ってくれるのは、お互いが特別だと思われているようで素直に嬉しかった。
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