無口な彼の熾烈な想い

執着

「ところで今日は何か用事があるのか?」

「今日は保護犬と保護猫の譲渡会があるの。クリスマスに訳ありの動物達が新しい家族に迎えられるなんて素敵じゃない?いつも休みの日に不定期でボランティア参加してるんだ」

温かいお味噌汁を啜りながら、満足そうに鈴が微笑む。

仕事としての料理もいいが、こうして愛する人に食べてもらえる家庭料理を作るのもいいな、と絢斗は実感していた。

「それって俺も参加できる?」

「えっ、絢斗さん、今日はお仕事じゃないの?」

「急遽、休みになった。姉さんとルイが鈴を頑張って落とせってさ」

取り繕うこともない正直な発言に、鈴は味噌汁を吹き出しそうになった。

「へ、へえ。随分と融通が利く職場なんだね」

「鈴んとこも似たようなもんだろ」

「確かに」

二人は苦笑すると、お互いの姉、兄を思い出して遠い目をした。

まあ、彼らの協力のお陰で二人の今があるのは間違いないのだから素直に感謝するべきだろうが。

「譲渡会参加は問題ないよ。退屈かもしれないから途中で帰っても大丈夫だからね」

譲渡会は10時から14時の4時間、駅のロータリーの一角で開催される。

鈴は譲渡会のお世話係と言うよりは、譲渡会の日の犬猫の体調を見たり、譲渡を望む人たちから、動物の健康面の相談を受けるといった獣医としてのボランティア活動がメインだと言った。
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