無口な彼の熾烈な想い
『推しメン、激レアスチルゲットならず💢💢』
親友とのSNSトーク画面には、二万課金したにも関わらず、期間限定誕生日激レアスチルをゲット出来なかった悔しさが語られていた。
ゲーム内の誕生日イベントはキャラの誕生日とその前後の日、数日間しかガチャを引けないなどの制約が多い。
その日を逃したら手に入らない激レアを引くために、惜しげもなく課金をしたくなるファン心理を巧みに利用した戦略といえよう。
かなえは、その日たまたま手に入った激レアスチルをスクショして、満たされない欲望の捌け口として送信してくれていたのだが、
゛簡単にスクショして保存できるなら、激レアスチルもネットで検索後に画像をスクショしてゲットすればよくね?゛
と、リア充の皆様は思うに違いないがそれは間違っている。
リアルファンにとっては、ゲーム内で正当な手段で苦労してゲットしたスチルを手にすることこそが゛正義゛で゛愛゛なのだから。
彼らは課金することでゲーム会社が潤い、果ては推しメンのゲーム内成長に繋がることに生き甲斐や喜びを感じている。
とはいえ、鈴も経歴数ヵ月未満のにわかゲームファン。
そこのところの微妙さを理解するのに、鈴は好みのゲームにぶち当たることのできた現在まで8年近くかかったのだからなんとも形容しがたい。
その上、いまだ課金するまでの極地には至っていないのだから。
せいぜい画集や一部グッズを買ったりするくらいだろうか。
かなえのSNSトークが送信されたのは昨夜22時だ。
今返信しても既読が付くとは限らないな。
しかし、こちらの既読がついた以上は完全スルーをきめ込む訳にはいかない。
フリーのイラストレーターをしているかなえは在宅ワークが中心だが、仕事に集中しているときは何日も連絡がつかないことがある。
もしかしたら、推しメンの誕生日イベントにやぶれ今頃荒れて聖地巡りをしているかもしれない。
聖地とは乙女ゲームの関連グッズ販売をメインとしたショップが集まる区画。
案の定、
『明日、時間があったらショップにいかない?』
と、スクロールを進めたかなえのSNSトークに書かれていたところを見ると、既に誰かともしくは一人で出かけている可能性が高い。
時計は既に10時を過ぎている。
鈴は、それでも焦らずにのんびりと朝食を摂ることにした。
お互い緊急の仕事や連絡が取れないことには慣れている。
困ったとき、会えるときに会える友人関係。
かなえとの関係は、そんなルーズな中にも確実な信頼のもとに成り立っている特別なもの。
わがままで一方的な3次元の彼氏とは確立できない、そんな友人がいるだけで、お一人様の鈴の心は十分満たされているのだった。
親友とのSNSトーク画面には、二万課金したにも関わらず、期間限定誕生日激レアスチルをゲット出来なかった悔しさが語られていた。
ゲーム内の誕生日イベントはキャラの誕生日とその前後の日、数日間しかガチャを引けないなどの制約が多い。
その日を逃したら手に入らない激レアを引くために、惜しげもなく課金をしたくなるファン心理を巧みに利用した戦略といえよう。
かなえは、その日たまたま手に入った激レアスチルをスクショして、満たされない欲望の捌け口として送信してくれていたのだが、
゛簡単にスクショして保存できるなら、激レアスチルもネットで検索後に画像をスクショしてゲットすればよくね?゛
と、リア充の皆様は思うに違いないがそれは間違っている。
リアルファンにとっては、ゲーム内で正当な手段で苦労してゲットしたスチルを手にすることこそが゛正義゛で゛愛゛なのだから。
彼らは課金することでゲーム会社が潤い、果ては推しメンのゲーム内成長に繋がることに生き甲斐や喜びを感じている。
とはいえ、鈴も経歴数ヵ月未満のにわかゲームファン。
そこのところの微妙さを理解するのに、鈴は好みのゲームにぶち当たることのできた現在まで8年近くかかったのだからなんとも形容しがたい。
その上、いまだ課金するまでの極地には至っていないのだから。
せいぜい画集や一部グッズを買ったりするくらいだろうか。
かなえのSNSトークが送信されたのは昨夜22時だ。
今返信しても既読が付くとは限らないな。
しかし、こちらの既読がついた以上は完全スルーをきめ込む訳にはいかない。
フリーのイラストレーターをしているかなえは在宅ワークが中心だが、仕事に集中しているときは何日も連絡がつかないことがある。
もしかしたら、推しメンの誕生日イベントにやぶれ今頃荒れて聖地巡りをしているかもしれない。
聖地とは乙女ゲームの関連グッズ販売をメインとしたショップが集まる区画。
案の定、
『明日、時間があったらショップにいかない?』
と、スクロールを進めたかなえのSNSトークに書かれていたところを見ると、既に誰かともしくは一人で出かけている可能性が高い。
時計は既に10時を過ぎている。
鈴は、それでも焦らずにのんびりと朝食を摂ることにした。
お互い緊急の仕事や連絡が取れないことには慣れている。
困ったとき、会えるときに会える友人関係。
かなえとの関係は、そんなルーズな中にも確実な信頼のもとに成り立っている特別なもの。
わがままで一方的な3次元の彼氏とは確立できない、そんな友人がいるだけで、お一人様の鈴の心は十分満たされているのだった。