無口な彼の熾烈な想い
「彼女、清楚な美人でしたね。素直だし媚びないし。なんか一緒にいるだけで癒されるような魅力的な女性でしたね。・・・しかし、意外でした。オーナーって名だたる著名人にいい寄られても相手にしなかったからてっきりゲイもしくはゲテモノ好きなのかと思ってたのに」
「絢斗は何事にもこだわりが強いだけなのよ。並の女には相手にできない(くらい闇落ちしてる)っていうか、運命の人を待っていたともいうべき?」
「げ、マネージャーからそんな乙女チックな言葉が聞かれるなんて、明日は雪かな」
「失礼な。私だって仕事を離れればただの弟想いの優しい姉なのよ」
綾香と一緒に二人を見送りに出ていたイケメンホスト1号、いやイケメンギャルソン三崎涼馬(みさきりょうま)22歳は大袈裟に驚いて見せた。
三崎は今夜、鈴と綾香のサーブを担当していた。
『ありがとうございます』
『美味しかったです』
『知識が豊富なのですね』
サーブの度にギャルソン(フランス語で男性のウェイターのこと)にお礼や労いの言葉を述べることができる人は実は少ない。
その点、鈴は余計な感情こそあまり表情に出さないが、感動や感謝の念は素直に言葉に表し、嬉しいときは満面の笑みで表現する。
更に、適切なタイミングで相手を労うことのできる天性の人タラシともいえた。
絢斗の想い人でなければ、うっかり涼馬も惚れてしまいそうになるくらい心根の優しい女性。
それが、涼馬が得た鈴の印象だった。
そんな涼馬の本音を、綾香は見抜いていたのだろう。
「鈴先生はダメよ。あの子は私の義妹にするんだから」
「オーナーのお嫁さんではなくて?」
「絢斗のお嫁さんになるのはオプションよ。合法的に手に入れるにはそれしか方法がないからね」
「綾香さんに狙われるなんて、鈴先生、可哀想に」
「鈴先生ではなくて平野先生とお呼び」
名前にすら独占欲を見せる綾香の本気が怖い。
いずれにしろ、あの朴念仁の絢斗がどこまでやれるか涼馬も気になっているところだ。
順調なのは良いこととはいえ、刺激の少ないと思っていた安定した職場に、今夜は激震が走った。
゛高みの見物でもしますか゛
と、涼馬は段々と小さくなっていく真っ黒なRV車を見送ると、小躍りしたい気持ちを押さえて店に入るのであった。
「絢斗は何事にもこだわりが強いだけなのよ。並の女には相手にできない(くらい闇落ちしてる)っていうか、運命の人を待っていたともいうべき?」
「げ、マネージャーからそんな乙女チックな言葉が聞かれるなんて、明日は雪かな」
「失礼な。私だって仕事を離れればただの弟想いの優しい姉なのよ」
綾香と一緒に二人を見送りに出ていたイケメンホスト1号、いやイケメンギャルソン三崎涼馬(みさきりょうま)22歳は大袈裟に驚いて見せた。
三崎は今夜、鈴と綾香のサーブを担当していた。
『ありがとうございます』
『美味しかったです』
『知識が豊富なのですね』
サーブの度にギャルソン(フランス語で男性のウェイターのこと)にお礼や労いの言葉を述べることができる人は実は少ない。
その点、鈴は余計な感情こそあまり表情に出さないが、感動や感謝の念は素直に言葉に表し、嬉しいときは満面の笑みで表現する。
更に、適切なタイミングで相手を労うことのできる天性の人タラシともいえた。
絢斗の想い人でなければ、うっかり涼馬も惚れてしまいそうになるくらい心根の優しい女性。
それが、涼馬が得た鈴の印象だった。
そんな涼馬の本音を、綾香は見抜いていたのだろう。
「鈴先生はダメよ。あの子は私の義妹にするんだから」
「オーナーのお嫁さんではなくて?」
「絢斗のお嫁さんになるのはオプションよ。合法的に手に入れるにはそれしか方法がないからね」
「綾香さんに狙われるなんて、鈴先生、可哀想に」
「鈴先生ではなくて平野先生とお呼び」
名前にすら独占欲を見せる綾香の本気が怖い。
いずれにしろ、あの朴念仁の絢斗がどこまでやれるか涼馬も気になっているところだ。
順調なのは良いこととはいえ、刺激の少ないと思っていた安定した職場に、今夜は激震が走った。
゛高みの見物でもしますか゛
と、涼馬は段々と小さくなっていく真っ黒なRV車を見送ると、小躍りしたい気持ちを押さえて店に入るのであった。