無口な彼の熾烈な想い
「どうかしましたか?」

「いや、ありがとうって言っただけだ」

無口な男のツンなしのデレ続きに、鈴のライフゲージは減少の一途をたどっている。

なんか、攻略中のゲームの推しメンの反応と被りキュンとして落ち着かないのだ。

そういや、なかなかデレない推しメンに、ゲームを始めた当初は苦労したこともあったよなあ・・・。

と、鈴がそんな身近な過去に想いを馳せようと逃げを打った時、現実は容赦なく

゛ほら、こっちを見ろよ゛

と色仕掛で囁いてくる。

「料理の感想をくれたお礼に、明日、動物園に連れていく」

えっ、なぜにお礼?

なぜに動物園?

それに、答えを求めぬ限定形なのは決定事項なのだからか?

急なお誘いはもしや、意趣返し(復讐)では・・・。

疑念に支配される頭では、最早正常な判断は望めそうもない。

鈴はなんとか

「お礼なんて不要ですよ。本来ならこちらがお料理をご馳走になった立場なのだから、お礼をすべきなのに・・・」

と、そう言うのが精一杯であった。

「じゃあ、そのお礼とやらが動物園でいい」

「はい・・・。それが本来の形・・・??いや、言ってることおかしいですから!」

「言質はとった。訂正は認めない」

お礼のお礼のお礼・・・。

まさに無限のループである。

そんなものに付き合っていたら今後身が持たない、神経がすり減ってしまう・・・。

鈴は意を決して早急に断りをいれようと、運転中の絢斗を見て固まった。

無表情なイケメンが口角を上げて微笑んでいたから、である。

その姿は、なかなかなつかない犬が尻尾を振ってお座りをして待っていてくれたような、キュン死寸前の萌えレアショットだった・・・。

その後、鈴の視線に気付き、絢斗は一瞬テレたような顔をしてからいつもの無表情な顔に戻ったのだが・・・。

そんなギャップを見せられてしまうと、動物園デート?を断ることができなくなってしまうやろ~!

本当にイケメンずるい・・・。

戦うまでもなく、いつでも軍配はイケメンに上がるのである。

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