無口な彼の熾烈な想い
『何でそんな面白いことになってるのかな。鈴さんや』
絢斗に自宅マンションまで送ってもらい、ひとっ風呂浴びてベッドに横になると、時計はすでに22時を指していた。
゛明日イケメンと二人で動物園に行くからキャラ練りして、キャラ案送るね゛
とSNSメッセージを送ったところ、かなえが速攻で電話をかけてきたのがたった今である。
「うーん、卵詰まりのセキセイインコをあずかっていた三次元イケメンが、喪女の獣医にインコを助けてもらい、そのお礼をするために料理をごちそうしたら、そのまたお礼に喪女の獣医に動物園イベント強要する的な?お礼のお礼がお礼を呼ぶ・・・正に無限のループが完成したってわけよ」
『何、そのざっくりとした説明、リアル三次元イケメンルートとか、鈴たん美味しすぎるやろ」
面白がっているかなえは無視するに限る。
何がどうしてこうなったかなんて、一番知りたいのは鈴だ。
絢斗は動く三次元イケメンにもかかわらず、思ったよりも好青年ではあった。
しかし、ここはリアルな現実世界。
転生もののファンタジーでもあるまいし、ガチでツンツン(デレも追加中)イケメンオーナーシェフルートの沼にはまって身動きがとれなくなるなんてことはしたくない。
なにせ、鈴は何もかもが中途半端な、素人に毛が生えたくらいの初心者乙女ゲーマーの上、リアルでは恋愛ド素人。
無口で無表情なツンツンのみの瀬口ならまだしも、言葉を覚え(何気に失礼)デレ技を追加したイケメンに勝てる気がしない。
ゲームであれば、何度でもスイッチを切ればやり直せる。
好きなところでセーブもできるだろう。
しかし、現実世界には感情を持った相手がいて傷つけることもあれば傷つけけられることにも耐えなければならない。
正直言えば、鈴は恋愛で傷つくことを過剰に恐れていた。
男性にのめり込んで、どこまでも落ちていく、そんな未来は欲しくない・・・。
しかし、いつまでも目をつぶり、見たくないものに蓋をしてばかりでは逃げていることと同じだろう。
あの繊細な料理を作る謎めいたイケメンオーナーシェフにほんの少しの興味が持てた。
鈴はそんな一つのきっかけをチャンスに、人としての大きな一歩を踏み出そうとしていた・・・。
「まあ、せっかくだから、昨日かなっちに頼まれた狼とホワイトタイガーのスケッチ、動物園で描いてくることにするよ」
あくびをしながら鈴は、明日の予定を口にした。
本来なら、モフモフファンタジーもののTL小説の表紙と挿し絵を描くことを依頼されたかなえだけの仕事なのだが、いかんせん、かなえは動物イラストだけは苦手だ。
メインキャラはかなえが描くとして、モフモフだけは鈴に描いてほしいとお願い、いや強制されたのだ。
そんなこんなで、偶然にも明日は1日、動物のイラストを描くことにしていた。
ネットの写真を見るよりも、ガチの動物を動物園で見る方がいいだろう。
『こっちとしてはありがたいけど、せっかくのデートなのにそんな暇あるの?』
「デートではないよ。目的は聞かされてないけど仕事かなにかでしょ?」
『まさか、世間では男と女が非日常へと出かければ、それをデートと呼ぶのだよ』
「わかった。もうそれでいいよ。眠い」
掛け合い漫才のような会話もいい加減に疲れてきた。
明日も早いのだ。
集合時間8時とか゛遠足か!゛と突っ込みたいところだが、突っ込むまもなく奴(絢斗)は消え去ったのだ。
生憎、奴の連絡先はひらのペットクリックの取引先名刺ホルダーの中だ。
持ち帰らなかった昨日の自分を呪いたい。
『・・・鈴たん?こりゃ寝落ちしてんな・・・おやすみ』
スマホの通話の向こうで、かなえが何かを言った気がしたが、眠りの世界に誘われた鈴には届かなかった。
絢斗に自宅マンションまで送ってもらい、ひとっ風呂浴びてベッドに横になると、時計はすでに22時を指していた。
゛明日イケメンと二人で動物園に行くからキャラ練りして、キャラ案送るね゛
とSNSメッセージを送ったところ、かなえが速攻で電話をかけてきたのがたった今である。
「うーん、卵詰まりのセキセイインコをあずかっていた三次元イケメンが、喪女の獣医にインコを助けてもらい、そのお礼をするために料理をごちそうしたら、そのまたお礼に喪女の獣医に動物園イベント強要する的な?お礼のお礼がお礼を呼ぶ・・・正に無限のループが完成したってわけよ」
『何、そのざっくりとした説明、リアル三次元イケメンルートとか、鈴たん美味しすぎるやろ」
面白がっているかなえは無視するに限る。
何がどうしてこうなったかなんて、一番知りたいのは鈴だ。
絢斗は動く三次元イケメンにもかかわらず、思ったよりも好青年ではあった。
しかし、ここはリアルな現実世界。
転生もののファンタジーでもあるまいし、ガチでツンツン(デレも追加中)イケメンオーナーシェフルートの沼にはまって身動きがとれなくなるなんてことはしたくない。
なにせ、鈴は何もかもが中途半端な、素人に毛が生えたくらいの初心者乙女ゲーマーの上、リアルでは恋愛ド素人。
無口で無表情なツンツンのみの瀬口ならまだしも、言葉を覚え(何気に失礼)デレ技を追加したイケメンに勝てる気がしない。
ゲームであれば、何度でもスイッチを切ればやり直せる。
好きなところでセーブもできるだろう。
しかし、現実世界には感情を持った相手がいて傷つけることもあれば傷つけけられることにも耐えなければならない。
正直言えば、鈴は恋愛で傷つくことを過剰に恐れていた。
男性にのめり込んで、どこまでも落ちていく、そんな未来は欲しくない・・・。
しかし、いつまでも目をつぶり、見たくないものに蓋をしてばかりでは逃げていることと同じだろう。
あの繊細な料理を作る謎めいたイケメンオーナーシェフにほんの少しの興味が持てた。
鈴はそんな一つのきっかけをチャンスに、人としての大きな一歩を踏み出そうとしていた・・・。
「まあ、せっかくだから、昨日かなっちに頼まれた狼とホワイトタイガーのスケッチ、動物園で描いてくることにするよ」
あくびをしながら鈴は、明日の予定を口にした。
本来なら、モフモフファンタジーもののTL小説の表紙と挿し絵を描くことを依頼されたかなえだけの仕事なのだが、いかんせん、かなえは動物イラストだけは苦手だ。
メインキャラはかなえが描くとして、モフモフだけは鈴に描いてほしいとお願い、いや強制されたのだ。
そんなこんなで、偶然にも明日は1日、動物のイラストを描くことにしていた。
ネットの写真を見るよりも、ガチの動物を動物園で見る方がいいだろう。
『こっちとしてはありがたいけど、せっかくのデートなのにそんな暇あるの?』
「デートではないよ。目的は聞かされてないけど仕事かなにかでしょ?」
『まさか、世間では男と女が非日常へと出かければ、それをデートと呼ぶのだよ』
「わかった。もうそれでいいよ。眠い」
掛け合い漫才のような会話もいい加減に疲れてきた。
明日も早いのだ。
集合時間8時とか゛遠足か!゛と突っ込みたいところだが、突っ込むまもなく奴(絢斗)は消え去ったのだ。
生憎、奴の連絡先はひらのペットクリックの取引先名刺ホルダーの中だ。
持ち帰らなかった昨日の自分を呪いたい。
『・・・鈴たん?こりゃ寝落ちしてんな・・・おやすみ』
スマホの通話の向こうで、かなえが何かを言った気がしたが、眠りの世界に誘われた鈴には届かなかった。