無口な彼の熾烈な想い
それを見た3次元イケメンは、再び呆然としている。

「そいつはもう復活したのか?」

「卵が出れば問題ないですから」

「鏡に向かって・・・こいつは何を・・・」

「求愛行動ですよ。もしかして、あなたにも同じような行動をしていましたか?」

無言の3次元イケメンからは゛是゛という答えしか見受けられなかった。

「もしかして、籠の中に鏡をぶら下げたり、籠の置いている部屋の電気をつけっぱなしにしていたり、インコを外に出したときに背中を撫でてやったりしませんでしたか?」

はっと目を見開いた3次元イケメンの答えは聞くまでもないだろう。

「すべては発情を促す行動です。この子は貴方や鏡の中の自分に恋をしたのかも知れませんね」

微笑み混じりにからかうと、3次元イケメンは可哀想な位に青ざめて首を振っていた。

セキセイインコの発情期は一定していない。

一羽飼いのインコは一生卵を産まないメスもいれば、発情し続けるメスもいる。

このインコは後者と言えるかもしれない。

今後は適切な対処法を飼い主が身につけないと致命的になりかねない。

「飼い主はいつお戻りに?」

「明日」

「籠をお持ちでないようですし、今夜はこちらでお預かりしましょうか」

鈴の言葉に、3次元イケメンは明らかにホッとした様子で頷いた。

「それでは、こちらにインコのお名前と貴方様のお名前、ご住所電話番号をご記入ください」

鈴は3次元イケメンに問診票を手渡すと、鏡に向かって求愛行動を続けるセキセイインコを空いている鳥かごにそっといれるのだった。
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