無口な彼の熾烈な想い
インコの名前:ピー

飼い主(代理):瀬口絢斗(せぐちけんと)28歳

問診票にはその他、3次元イケメンの住所と携帯番号、そしてご丁寧にも飼い主(姪)関口花菜(せきぐちかな)の名前と連絡先も備考欄に書き込まれていた。

「申し遅れましたが、私はこちらで獣医をしている平野と言います。今晩、万が一ピーちゃんに何かありましたら瀬口さんの携帯にご連絡をいれますがそれでよろしかったですか?」

「ああ」

「明日の引き取りは何時に?」

「18時でも?」

「かしこまりました」

鈴の渡した名刺をまじまじと見つめる瀬口は、相変わらず愛想のない簡潔な言葉で返事を返した。

「お支払いは明日まとめて頂きます。もう時間も遅くなりましたので気をつけてお帰りください」

得意の営業スマイルで丁寧に言葉を重ねるが、本音は眠いから早く帰って欲しいという意味だ。

今朝、犬の緊急の手術が入り、鈴は立ちっぱなしで疲れているのだ。

「時間外にすまない。それにインコをあずかってもらって・・・」

ボソボソと話を続けてくる瀬口の様子にもイラッとしてきた。

「いえいえ、仕事ですからお構いなく。それではまた明日」

鈴は笑顔で瀬口を院外へ押し出すと、ピシャリと彼の面前でドアを閉め内鍵を閉めるのだった。
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