無口な彼の熾烈な想い
「何も聞かないのか？」

ぬいぐるみの清算を終えて、猛禽類のスーベニアショップを出たところで、絢斗はボソボソと呟いた。

そんな絢斗をちらりと見やると

「話したいなら聞きますけど、それは今でなくてもいいです。私も自然体の絢斗さんと過ごしたいですから。無理はしないでください」

そう、言いきる鈴は、再び園内マップに目を向けて、さきほどの出来事にはあまり興味はないと言った風にしながら、眉間にシワを寄せていた。

「ホワイトタイガー、ここにいるらしいんだけどな・・・」

地図が読めない鈴は本気で位置関係がわからず困っているようだった。

わざとらしくもなく、自然な態度が彼女の正直で真っ直ぐな性格を表している。

そんな鈴の態度や言葉の一つ一つが、絢斗には心地よく感じていた。

ならばここはありがたく甘えて、さっきの件は一旦保留しよう。

いつか心が落ち着き、話せる段階になったら鈴に全部を話したい。

あの夫婦との関係も、消したい過去と抗えない現実へのジレンマも、全て・・・。

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