無口な彼の熾烈な想い
人には、触れられたくはない秘め事が1つや2つはある。

鈴にとっては両親のことがそうだし、男性や恋愛に関する苦手意識もそうだ。

絢斗と先程の二人の関係も、絢斗の嗜好とやらも、絢斗が話そうとしない以上、鈴は触れないでいようと思っている。

スーベニアショップを出て、向かった先はホワイトタイガーと狼のブース。

鈴はブサカワの猛禽類も好きだが、正統派ヒーローとも言える虎や狼も好きだ。

野生を追われ、閉じ込められた孤城の中でも彼らは毅然とした勇姿を我々に見せてくれる。

まあ、たまにはお腹を出してだらしなくしていることもあるが・・・それはご愛敬・・。

「絢斗さん、私、この辺りで少し副業の作業に取りかかりたいと思うのですが、待たせるのも悪いのでしばらく別行動にしてもいいですか?」

ホワイトタイガーを観察するにはベストなポジションに陣どって、鈴は大きなトートバッグから画材を出し始めた。

「俺の目的はすでに果たした。別行動するなんて言われても逆に困る」

絢斗は、スケッチブックを抱えた鈴からトートバッグを奪い取ると

「持っててやるよ。好きにしてろ」

そう告げると、絢斗は鈴の隣のベンチに腰かけた。

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