無口な彼の熾烈な想い
「へえ、上手いもんだな」

鈴は鉛筆でサラサラとラフ画を描くと、動物の動きを見ながらさまざまな構図でキャラデザイン画を作っていった。

ホワイトタイガーがふとした瞬間に見せる微笑ましい仕草や、デフォルトである凛凛しい顔つきや姿勢も、全てが鈴のトキメキポイントであった。

「友達が担当するラノベの表紙と挿し絵のお仕事なんですけど、どうしてこうなったのか、高校生時代からずっと手伝わされていて。彼女、人物と風景は超絶に上手いのに動物はからっきしダメなんですよ。笑えるでしょ?プロなのに」

話ながらも鉛筆を動かし、思うままに線を重ねイメージを固まらせていく。

「俺もこれ(スケッチブック)借りてもいいか?」

鈴に刺激されたのか、絢斗も童心にかえってスケッチしたくなったのだろうか?

今日は12月中旬とはいえ、ポカポカと日差しが暖かい。

大の大人が二人でお絵かきなんて、デートとしてはいまいちかも知れないけれど、そもそもデートではないので気にする必要はないだろう。

「ええ、どうぞ。絢斗さんもお好きな画材を使って思う存分描いて下さい」

鈴は笑顔で頷いた。
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