無口な彼の熾烈な想い
小一時間ほどが過ぎた頃だろうか?

鈴がう~んと背伸びした後に隣を見ると、絢斗がスケブとペンを持ったままウトウトしていた。

「お待たせしてすみません。待ち疲れましたよね?」

鈴が声をかけると、絢斗はゆっくりと目を開け、その後は驚いたように背筋を伸ばした。

「俺は眠っていたのか」

「あんまり気持ち良さそうなので起こすのが忍びなかったです」

鈴がおどけて言うと、絢斗も少し照れたように笑った。

可愛いな、おい。

次々に意外な一面を見せられて、鈴のハートは萌えに殺られて軋むばかりだが悟られてはいけない。

我慢、我慢だ。

「素敵な絵ですね?お料理のアイデアですか?」

絢斗が描いていたのは、パステルカラーで描かれた美しい料理の数々だった。

「ここに来て、鈴の絵を見て、アイデアが湧いた」

やはり、純粋に動物園を楽しんでいるのではなく仕事を絡めるとか自分達は似た者同士だな、と鈴は苦笑した。

「梟カフェではなくて、動物をイメージした料理の店を作る」

絢斗は、考え描き出したメニューの数々をプレゼンしながら、鈴にそう言った。

「素敵。どんな動物がイメージされた料理なのか想像しながら食事をいただくのも楽しそう」

鈴は、渡されたスケッチブックの中の楽しくて美味しそうな料理の数々に心を踊らせた。

「鈴の絵は出来上がったのか?」

「はい。表紙と挿し絵に使われるのは数枚なので、この中から選べばなんとか賄えると思います」

鈴が描いた絵は、ホワイトタイガーと銀色狼のかっこよさと、デフォルメされた可愛さを上手く表現していた。

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