無口な彼の熾烈な想い

姉の策略と弟の本気

「で、絢斗はフクロウカフェは最適案ではないと言うのね?」

一方、フラケン(flower of Kent at EAST)のマネージャー室では、絢斗がスケッチブックを抱えて綾香にプレゼンを始めていた。

「何より姉さんはそんなにフクロウが好きだったのか?インコはまだしも・・・」

「ええ、好き(鈴ちゃんがね)だと思うわ」

「だが、好きだけでは飼育は無理だ。餌は生のネズミや鶏の頭だぞ」

「絢斗の仕事にすればいいわ」

「俺には無理だって知ってるだろう?」

実は、絢斗はかなりの動物好きだ。

かつて捨て猫や捨て犬おまけに烏の子どもまで拾ってきて、その事が母親にバレて押し入れに軟禁されたことがあるくらいのお人好しでもある。

そんな絢斗が、生(なま)、しかも皮を剥かれたネズミや首だけの鶏を見て冷静でいられるとは綾香も思っていない。

綾香も本当は猫カフェか小鳥カフェを考えていた。

しかし、娘である花菜の飼っているインコが関口ファミリーの留守中に卵詰まりを起こし、たまたま絢斗がネットで調べたペットクリックの獣医に知り合うという奇跡が起きた。

絢斗はまだ自覚してはいなかったが、卵詰まりイベントを報告してきた絢斗の様子からは、明らかにその女(獣)医に心を奪われているのがわかった。

それは今だかつてない出来事であり、同時に綾香に一筋の希望をもたらす慶事でもあった。

綾香が実際に会った鈴の印象も最高で、そこいらにいる絢斗の顔やスタイルだけを目的にやってくるお姉ちゃん方とは雲泥の差だった。

そうして、綾香が鈴にロックオンしてからは事情が変わった。

動物カフェの開店を検討している、というこの好都合な状況を利用しない手はない。

なにせ攻略相手は、動物に詳しい無類の動物好きであろう獣医師なのだから。

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