無口な彼の熾烈な想い
「ふうん、裸のネズミも首だけの鶏も、毎日触るのも見るのも嫌だわ。絢斗の代替え案とやらを聞こうじゃないの」

鈴をインコのお礼と称してフラケンに呼んだのも、綾香の策略のひとつであった。

無口で無愛想な絢斗はもちろん女慣れしていない。

気に入った女性が出来たところで自分でデートに誘うことなど期待できない・・・

いや、自分の気持ちに気付くことさえも何年もかかり、うっかり気づいた時にはすでに鈴は結婚していた、なんてオチになることは目に見えている。

なんの攻略策もなく、初めから二人きりにするのは得策ではない。

幸いなことに、ひらのペットクリックにいた他の獣医師二人は鈴の兄夫婦で、出会ったばかりの初々しい絢斗と鈴に向ける目には、綾香と同じなんらかの期待が浮かんでいた。

それならば兄夫婦の協力を得てじわじわ攻めていくのが正解だ。

その策は効を奏して、絢斗と鈴の動物園デートイベントを発生させた。

やればできる子だった絢斗は、何とか鈴を動物園に誘いだし、自ら動物スケッチイベントまで攻略し現在に至る。

内心は、

゛さすが私の弟!絢斗、やったわね!゛

と、絶賛弟バカを発動中だったのだが、何かを勘づかれて警戒されては元も子もない。

我慢だ、我慢。

綾香は冷静を取り繕って、絢斗の動きを待った。

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