無口な彼の熾烈な想い
「アニマルズプレート?」

「ああ、好きな動物や、好みの動物が出てくる絵本とかアニメの世界観に合わせて、客のリクエストに合わせた料理を作って提供しようと思ってる」

「それって無数のパターンが考えられるでしょ?一人一人に対応していたらキリがないんじゃないの?」

綾香の懸念はもっともだ。

「一日に予約を受ける数には制限を入れる。リクエスト内容も前日までの予約制にする。誕生日とか結婚記念日とか、特別な日に限定したメニューにしたい」

「それでも相手が気に入らなかったらクレームに繋がることもあるかもよ?それなら定番メニューを提供した方が・・・」

ついつい弱気になる綾香だったが、経営者目線なのだから採算がとれることが大前提。

厳しい意見も仕方のないことと言える。

「鈴も・・・俺の案に賛成してくれたんだ。協力も惜しまないと言ってくれている」

なんと、絢斗は事前に鈴に相談していた。

しかも協力の承諾まで得て・・・。

゛小賢しい奴・・・!゛

綾香は感動しすぎてのたうち回りたくなったがひたすら我慢するしかない。

「上手くいかないからって途中で投げ出すのはなし、よ?」

綾香の言い分に、絢斗は大きく頷いて

「鈴に失望されたくはないから全力でやり通すよ」

と言った。

言い切る絢斗の清々しさが眩しい・・・弟が尊すぎてつらい・・・。

「いいわ。とりあえず期間限定でやってみて利益が出るかを見ましょう。もちろん、鈴先生の協力の約束は死守よ」

「ああ」

頷く絢斗の口角がわずかに上がっている。

耳元もほんのり赤くて嬉しそうだ。

゛ああ、神様、素敵な巡り合わせをありがとう!゛

当事者である絢斗よりも大興奮の綾香は、マネージャー室を出ていく絢斗を見送ると、慌てて夫であるルイのスマホに電話を入れるのであった。
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