無口な彼の熾烈な想い
いやいや、まさかの゛父親が男の娘゛発言。

暴露本や女性週刊紙も真っ青なネタをサラリと暴露してきましたな、お姉さま。

「ということは、お父様に関してはなんの疑いもなくその現状を受け入れて暮らしている。もちろんお母様もそんなお父様を女性として愛し結婚して子を成した。そういうことであっていますか?」

ご両親の間に、男女の生殖活動に関する葛藤はなかったのか?という質問は愚問だ。

お互いの状況を受け止め受け入れているのだから、それは当人同士の問題で他人がどうこういう問題ではないだろう。

だが、それを子供に強要するのは次元が違う。

子供は親の所有物ではないのだから。

「母は昔から男の人に何らかのトラウマを持っていたらしいの。でも兄妹みたいに育った父にだけは心を開いていた。だから周囲の期待に応えて子をなす事も考えられたのだと思うわ。夢見がちで我が儘な母は、神に祈れば本気で女の子しか生まれないと信じていたようなのね。一人目の私が娘だったから余計に母の盲信はエスカレートして二人目を考えるに至った。・・・たけど生まれてきた子供は男の子で、その上、成長するにつれ女の子になることを拒む・・・母にとっては厄介な子供だった」

生まれてきた絢斗が男の子であることを知らされた途端、彩月は絢斗の世話を拒んだらしい。

絢斗の世話はベビーシッターに任せきりだったくせに、絢斗が着るものや見かけには口うるさく干渉してきた。

女の子ものの洋服を着せ、髪を伸ばし幼稚園や小学校では女の子のように振る舞うことを強要した。

そんな状況では、絢斗が無表情で無口なツンツンイケメンになるのは致し方ないことだったと言えるだろう。

゛でも、女の子の格好をした絢斗もきっと可愛かっただろうな・・・゛

なんて、邪な考えがちらりと鈴の頭をよぎったことは内緒にしておこうと思う。
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