無口な彼の熾烈な想い
「むしろ、絢斗さんは凄いと思いますよ。親御さんのことを悪く言うこともないし、愚痴もこぼさず、いじけてもいない。やりたいことに向かって前向きに進んでいるし・・・。親への抵抗の仕方なんてこれから先いくらでも身に付けることはできますから」

鈴がそう言いきったタイミングでVIPルームの入り口のドアが開けられた。

「うそ?フクロウ型のアイスとミミズクonブッシュ・ド・ノエルだ」


チョコで顔や羽の柄が描かれたアイスと文字通りチョコで作られたミミズクがのせられたブッシュ・ド・ノエル。

そしてカップの中には、ラテアートとして描かれた鷲の顔があった。

猛禽類尽くしのおもてなしに鈴は大満足のウハウハである。

「鈴、嬉しいか?」

「very very happy!ですよ」

「良かったな、絢斗。これで満足しただろ?」

鈴のリアクションを見てようやく達成感を得た絢斗は、エプロンを外し鈴の向かい側に座って一息ついた。

「動物にちなんだイメージ料理といってもそれほどコストはかからなかった。事前予約として受けるオーダーならパン生地とかチョコレート製の人形なんかは作りおきできるから手間もかからない。なんとか採算も取れると思う」

「味はイメージには影響されないしね。クリスマスは間に合わないから、バレンタインデーの企画としてとりあえずはやってみましょう」

ルイと綾香の言葉に絢斗も黙って頷いている。

先ほど乱入してきた彩月もさほどアニマルカフェにはこだわっていないことがわかったし、代替え案でなんとかなりそうで良かった。

猛禽類カフェなんていい出したときにはどうしようかと思ったが、丸くおさまってめでたしめでたしだろう。

助言というほど大したこともできなかったが、目にも舌にも美味しい料理をご馳走になって役得だった。

鈴は、綾香とルイの策略にまんまとのせられているとは微塵も思わずに、呑気にデザートの美しさと美味しさを堪能するのだった。

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