央弥は香澄のタオルしか受け取らない
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香澄はこんな失恋したときですら真面目に学校に来ていた。
央弥からは、好きと言う気持ちだけでなく、どんな時も頑張れという姿勢も教えられたと思うから。
でも溢れてしまいそう。
体の中が、苦しい気持ちで一杯で、動いたり話したりしたら溢れてしまう⋯⋯ 。
香澄はじっとただ教室に座っていた、
その時、
耳にその人の声が聞こえた。
「話がある」
教室に座っている香澄の真横に、背の高い人が立っている。
央弥が真剣な表情で香澄を見下ろしている。
チャイムが鳴り先生が来られた。
「あっ、東堂君?」
と驚いて言った。クラスの人も驚いて見ていた。
朝の1時間目だ。
慌てた様子の央弥が香澄のクラスに入ってきて香澄の席の横に立って話しかけていた。央弥は、
「昼に話そう」
と香澄に言って2年生の教室にもどっていった。
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怖かった。
きっと2人きりでは会わないって言われる。
彼がカノジョがいるのに他の子と仲良くする人だと思えないから。
実際もし自分がカノジョだとしても、自分以外に誰も彼の近くにいて欲しくない。
そんな人であって欲しくない。
(私はもう彼のそばにいれないんだ)
香澄の気持ちすら、彼には迷惑になってしまう。
タオルはもう渡せない。
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部室の裏、
木に囲まれて、
普段誰も来ない、
約束の場所に、
お弁当だけ置いた時、
さく、さく、
規則正しい足音が聞こえた。
香澄は思わず木の後ろに隠れた。
草をふみしめる音。
姿勢の良いキチンとした彼の歩き方だ。
誠実な、あんな人が彼女のタオルを受け取って、気持ちを受け取るって、それは本気でしかないよ、
さく、さく、
足音が止まる。