央弥は香澄のタオルしか受け取らない
央弥はすぐ翌日から教えてくれると約束した。
香澄は緊張していた。
(本当に央弥先輩、くるかな)
央弥と香澄は学年も違うから、お昼は部室近くの中庭でと央弥は言った。
彼が約束を違えるはずがないと分かっていても、香澄にとっては大変な出来事すぎる。
現実のことなんだろうか、香澄の妄想じゃないかと心配にすらなる。
しかし本当に央弥は、やや遅れて、約束場所にやってきた。
急いだ様子で少し汗をかいていた。
「待たせた、購買が混んでいて、思ったより時間がかかった!」
央弥の手にはパンが2つ。
香澄は意外に思った。
央弥先輩パンなんだ⋯⋯ 。
央弥は机に長い腕を軽く置いて、香澄の正面に座った。机についた手は鍛えられていて、長い指も手の甲の筋も手首の骨も、すごく大きくて、香澄と全然違う男の人の手だ。
彼が下を向いた時に前髪が揺れた。
髪の下から、切長の鋭い目が香澄を捉え、フッと柔らかく笑った。
硬派な央弥の笑顔に、香澄は真っ赤になった。
背の高さが30センチぐらい違うのかな、座ってもちょっと香澄は見上げるかんじだ。
すぐ近くの央弥の綺麗な顔、本当に彼がここにいるんだ!と思いながら、香澄はドキドキして彼に見入って大きく息を吸い込んだ。
央弥はクラブの時とは少し違って、足を組んでゆったりと座った。
長い手足が余るみたいに、でも鍛えられた筋肉は優雅だ。片方の肘を机について長い指で額と耳のあたりを軽く支え、もう片方の手は優雅に組んだ足に乗せ、くつろいだ感じがした。
央弥はそのまま香澄をじっとしばらく見て、
「教えてあげるね」
と言った。
なんか、分からないけど、香澄は央弥の視線に捕まったみたいに、動けないような息ができないような、背筋をピンと伸ばして、息を頑張って整えて、
「お願いします!」
とうわずった声で言った。
央弥の余裕な落ち着いた態度からは程遠くて、かーっと頭がどうかしてしまいそう、
そんな香澄の様子を央弥は見てフッと口元を緩めた。
「フフ、香澄は熱心だね」
と嬉しそうに言った。
それから央弥は丁寧にわかりやすく教えてくれた。
落ち着いた、しっかりした声。
話しながらの近い距離に、香澄はいちいちドキッとするし、目が合うと央弥の表情が緩んで口元が笑顔になって、それにもドキッとする。
香澄は一生懸命、央弥に習った事を覚えようとした。
勧められた本も読んでいる。
最初に教えてもらった防具の扱いは、早速クラブ中に(あっ、央弥先輩に教えてもらった)と思った。
無言で興奮していたら央弥と目が合った。
央弥は(うん、)と周囲に分からない程度に軽く頷いた。彼の口元が少し緩んで、香澄は彼が、香澄の興奮に応えてくれているのがわかった。
香澄が微かに反応した央弥に、さらに体中をピンとさせてハッとなったのを見て、央弥は唇に指を当てて笑いを堪えていた。
香澄は心が熱くなるのが止められなかった。
香澄は緊張していた。
(本当に央弥先輩、くるかな)
央弥と香澄は学年も違うから、お昼は部室近くの中庭でと央弥は言った。
彼が約束を違えるはずがないと分かっていても、香澄にとっては大変な出来事すぎる。
現実のことなんだろうか、香澄の妄想じゃないかと心配にすらなる。
しかし本当に央弥は、やや遅れて、約束場所にやってきた。
急いだ様子で少し汗をかいていた。
「待たせた、購買が混んでいて、思ったより時間がかかった!」
央弥の手にはパンが2つ。
香澄は意外に思った。
央弥先輩パンなんだ⋯⋯ 。
央弥は机に長い腕を軽く置いて、香澄の正面に座った。机についた手は鍛えられていて、長い指も手の甲の筋も手首の骨も、すごく大きくて、香澄と全然違う男の人の手だ。
彼が下を向いた時に前髪が揺れた。
髪の下から、切長の鋭い目が香澄を捉え、フッと柔らかく笑った。
硬派な央弥の笑顔に、香澄は真っ赤になった。
背の高さが30センチぐらい違うのかな、座ってもちょっと香澄は見上げるかんじだ。
すぐ近くの央弥の綺麗な顔、本当に彼がここにいるんだ!と思いながら、香澄はドキドキして彼に見入って大きく息を吸い込んだ。
央弥はクラブの時とは少し違って、足を組んでゆったりと座った。
長い手足が余るみたいに、でも鍛えられた筋肉は優雅だ。片方の肘を机について長い指で額と耳のあたりを軽く支え、もう片方の手は優雅に組んだ足に乗せ、くつろいだ感じがした。
央弥はそのまま香澄をじっとしばらく見て、
「教えてあげるね」
と言った。
なんか、分からないけど、香澄は央弥の視線に捕まったみたいに、動けないような息ができないような、背筋をピンと伸ばして、息を頑張って整えて、
「お願いします!」
とうわずった声で言った。
央弥の余裕な落ち着いた態度からは程遠くて、かーっと頭がどうかしてしまいそう、
そんな香澄の様子を央弥は見てフッと口元を緩めた。
「フフ、香澄は熱心だね」
と嬉しそうに言った。
それから央弥は丁寧にわかりやすく教えてくれた。
落ち着いた、しっかりした声。
話しながらの近い距離に、香澄はいちいちドキッとするし、目が合うと央弥の表情が緩んで口元が笑顔になって、それにもドキッとする。
香澄は一生懸命、央弥に習った事を覚えようとした。
勧められた本も読んでいる。
最初に教えてもらった防具の扱いは、早速クラブ中に(あっ、央弥先輩に教えてもらった)と思った。
無言で興奮していたら央弥と目が合った。
央弥は(うん、)と周囲に分からない程度に軽く頷いた。彼の口元が少し緩んで、香澄は彼が、香澄の興奮に応えてくれているのがわかった。
香澄が微かに反応した央弥に、さらに体中をピンとさせてハッとなったのを見て、央弥は唇に指を当てて笑いを堪えていた。
香澄は心が熱くなるのが止められなかった。