離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
プロローグ
ベッドに横たわる私の上へ馬乗りになりこちらを見下ろす男が、骨ばった大きな手で私の頬を撫でた。
「まつり」
私の名前を呼ぶ男に、作った恍惚とした表情を向ける。
「悠人さん」
頬にあった男の手に手を重ねると、男は切れ長の目を細めて微笑を浮かべた。覆いかぶさってきた男に、唇を塞がれる。
嫌悪感に顔がゆがみそうになるけれど、私は奥歯を噛みしめて男に身を委ねているふりをする。
こうなる前から抱かれることも覚悟していた。
生半可な思いでここへ来たわけじゃない。どれだけつらくとも、私はこの男と結婚するために今日まで生きてきたのだから。
使えるものは身体だってなんだって差し出してやる。必ずこの男の気持ちを私に向けて、一日でも早く父が味わった絶望を思い知らせてやりたかった。
目を閉じれば、幸せだった過去の日常の光景がまぶたの裏に浮かぶ。凍ったように冷えきっていた私の心に、鈍い痛みが走った。
お父さん……。
キスをしながら私の服を脱がせる男に脇腹をなぞられる。ぞくりと快感が背筋を駆け、私の身体が小さく跳ねた。
初めての感覚に内心ひどく戸惑う。この男が相手だというのに反応する自分に嫌悪感を覚えた。
男に触れられるたびに心がすり減っていくような心地になる。目的を果たすまでに、私はあと何回この男に抱かれるのだろう。
「まつり」
私の名前を呼ぶ男に、作った恍惚とした表情を向ける。
「悠人さん」
頬にあった男の手に手を重ねると、男は切れ長の目を細めて微笑を浮かべた。覆いかぶさってきた男に、唇を塞がれる。
嫌悪感に顔がゆがみそうになるけれど、私は奥歯を噛みしめて男に身を委ねているふりをする。
こうなる前から抱かれることも覚悟していた。
生半可な思いでここへ来たわけじゃない。どれだけつらくとも、私はこの男と結婚するために今日まで生きてきたのだから。
使えるものは身体だってなんだって差し出してやる。必ずこの男の気持ちを私に向けて、一日でも早く父が味わった絶望を思い知らせてやりたかった。
目を閉じれば、幸せだった過去の日常の光景がまぶたの裏に浮かぶ。凍ったように冷えきっていた私の心に、鈍い痛みが走った。
お父さん……。
キスをしながら私の服を脱がせる男に脇腹をなぞられる。ぞくりと快感が背筋を駆け、私の身体が小さく跳ねた。
初めての感覚に内心ひどく戸惑う。この男が相手だというのに反応する自分に嫌悪感を覚えた。
男に触れられるたびに心がすり減っていくような心地になる。目的を果たすまでに、私はあと何回この男に抱かれるのだろう。
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