離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 重厚感のあるオーク製のドアが、私と叔父を迎えてくれるように左右に開く。

 参列している人たちが、チャペルの入口に立つ私たちを目にして小さく感嘆の声を放つのが聞こえてきた。

 一歩ずつ。ブルーのバージンロードを踏みしめながら進み、私はふたりの父の手から悠人さんのもとへ向かう。

 ベール越しに、世界一愛しい人の姿が鮮明になっていった。悠人さんが、父たちに最大の感謝と敬意を払い深々と頭を下げる。顔を上げると、彼は「おいで」とこちらに手を伸ばした。

 私は、差し出されたその手を取る。

「悠人さん」

 名前を呼ぶだけで、表現できない愛おしさが胸を温かくした。

 ずっと見守ってくれていた悠人さんと、これからはともに同じ道を歩いていく。今度は私が、どんなときも彼の居場所になろう。

 悠人さんがすべてを受け入れてくれたおかげで、私が立ち止まれたように。
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