離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「座ったままだとつらいだろ。帰って休もう」

 言い終えた悠人さんが、身体を支えて起こしてくれる。私はわずかに痛みが走る腰をさすりながら「ありがとうございます」と彼に微笑みかけた。

 悠人さんも、大きくなった私のお腹に慈愛の眼差しをそそいでいた。

 悠人さんと結婚してから、もうすぐで五年の月日が流れる。

 私のお腹には、現在ふたり目の新しい命が宿っていた。

 まもなく臨月を迎えることもあり、お腹もずいぶん重くなってきた。最近は腰痛もひどくなってきて、座っているのもひと苦労だ。

 しかし、あと少しでこの子が生まれてくるのを家族全員待ち望んでいる。

 最初は兄弟ができると知り赤ちゃん返りを起こしていた樹里も、今では『あかちゃんうまれたらこれかしてあげるの』と毎日のように自分のおもちゃを私のもとへ届けてくれていた。
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