離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる

――悠人side

 俺は、静かに寝息を立てるまつりの顔にかかっていた髪をそっと指で退ける。

 覗く寝顔は思いのほか穏やかで、俺はいくらか肩の力が抜けていく気がした。

 やっと、目の前にいるんだな。

 先ほどまで身体を合わせていたというのに、今さらながら噛みしめる。

「俺が隣にいるのに、君はこんな顔をして眠るのか」

 行為のあと、まつりは倒れるようにそのまま眠りについた。初めてだったのに、かなり無理をさせてしまったな。

 彼女の白い首筋や額は、滲んだ汗でわずかに光っている。風邪を引かないようにと、俺は彼女の首もとまで布団をかけ直した。

 反応して「んっ」と漏れる彼女の高い声に、今しがた散々沈めたはずの昂りがぶり返しそうになる。

 最初は、気持ちもなしに身体を結ぶなんて簡単ではないと思い知らせたいだけだった。
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