パリへ追いかけてまで

「いらっしゃいませ。 
どのような物をお探しでしょうか?」

「はい。女性用と男性用のキーケースを見せて下さい。」

「畏まりました。 
ただ今お持ち致しますので、こちらへお座り下さいませ。
少々お待ちください。」

テーブルに2人で、座ると、店員さんがいくつかのデザインの商品を持ってきた。

「お持ち致しました。 失礼いたします。」

店員さんは、白い手袋をはめ、商品を開いて見せてくれた。

「萌ちゃん、君は、どれが良い?
俺は、こっちが良いかなぁと思うんだけど。」


「え? 私? 」

「うん。萌ちゃんの試用期間終了と、俺は受賞記念にお揃いでキーケースを買おうと思ってさ!
どっちが、良い?」

「こんな高価な物は受け取れないよ…」

「そうかぁ… ゴメン。
気に入ってもらえると思って、店に入ったけど…
じゃあ出ようか… ハハ…」

凄く残念そうな悲しい顔の亮を見たら
自分が亮を傷つけた気持ちになり胸が痛くなった。

店を出ようと、店員さんに声を掛けようとする亮を、萌は、亮の腕を掴んで

「やっぱり! お揃いで欲しい!」
と、亮に言った萌。 
顔は、恥ずかしいのか真っ赤になって、下を向いた。

「ありがとう。 じゃあ、どれが良いか萌ちゃんが決めて。さあ〜」

「え、 あ、うん。 コレ! 
定番だから、飽きないと思う…。」

「よし。じゃあ縁が、赤とピンクはどっち?」

「赤かな? 可愛い…」

「じゃあ俺は、黒い縁のにするわ!」
店員さんに亮は、にこやかに伝えた。

店員さんは、席を立ち用意するのでお待ち下さいと席を離れた。

亮が萌に小さな声で、耳打ちした。

「コンクールの副賞の賞金が、入ったから大丈夫!」

「え! そうなの? スゴイな佐藤さん。」

2人は、買ったものを受け取りブランド店から出て来た。
< 282 / 391 >

この作品をシェア

pagetop