パリへ追いかけてまで
「いらっしゃいませ。
どのような物をお探しでしょうか?」
「はい。女性用と男性用のキーケースを見せて下さい。」
「畏まりました。
ただ今お持ち致しますので、こちらへお座り下さいませ。
少々お待ちください。」
テーブルに2人で、座ると、店員さんがいくつかのデザインの商品を持ってきた。
「お持ち致しました。 失礼いたします。」
店員さんは、白い手袋をはめ、商品を開いて見せてくれた。
「萌ちゃん、君は、どれが良い?
俺は、こっちが良いかなぁと思うんだけど。」
「え? 私? 」
「うん。萌ちゃんの試用期間終了と、俺は受賞記念にお揃いでキーケースを買おうと思ってさ!
どっちが、良い?」
「こんな高価な物は受け取れないよ…」
「そうかぁ… ゴメン。
気に入ってもらえると思って、店に入ったけど…
じゃあ出ようか… ハハ…」
凄く残念そうな悲しい顔の亮を見たら
自分が亮を傷つけた気持ちになり胸が痛くなった。
店を出ようと、店員さんに声を掛けようとする亮を、萌は、亮の腕を掴んで
「やっぱり! お揃いで欲しい!」
と、亮に言った萌。
顔は、恥ずかしいのか真っ赤になって、下を向いた。
「ありがとう。 じゃあ、どれが良いか萌ちゃんが決めて。さあ〜」
「え、 あ、うん。 コレ!
定番だから、飽きないと思う…。」
「よし。じゃあ縁が、赤とピンクはどっち?」
「赤かな? 可愛い…」
「じゃあ俺は、黒い縁のにするわ!」
店員さんに亮は、にこやかに伝えた。
店員さんは、席を立ち用意するのでお待ち下さいと席を離れた。
亮が萌に小さな声で、耳打ちした。
「コンクールの副賞の賞金が、入ったから大丈夫!」
「え! そうなの? スゴイな佐藤さん。」
2人は、買ったものを受け取りブランド店から出て来た。