クズ男の独占欲に溺れて。
「なんなの……ほんとにわかんない」
「俺からすれば、絢瀬のほうがわかんない。嫌なら逃げればいいのに逃げないし」


思慮に欠けるこいつに論破されてしまうなんて、そう思うけれど、何も言えない。

それにきっとこいつは逃げる気がないことを知っていると思うし、知っている上で言っているに違いない。





「あんたのせいでしょ」

支離滅裂としか言いようがない自分に呆れるし、滑稽だし、羞恥に駆られた。

こいつの言いなりになってしまっているところに腹が立つ、そして、それなのに動かない自分にもっと腹が立つ。



「まあ、それは否めないかもね」

私を面白そうにわらったのに、サラッと認めてしまうこいつは全くもって読めないし、いくら考えてもわからない、理解できない人種だ。



「でもさ、逃げないのは絢瀬の意思でしょ?」
< 10 / 16 >

この作品をシェア

pagetop