クズ男の独占欲に溺れて。
こいつの周りはいつも人が溢れている。化粧っけのない私を構う必要はないし、根暗の私に構う必要もないし、私と関わる必要がないのだ。

それなのに、こいつは私を掴む手を緩めないし、はやく終わらせて帰りたいのに、彼の手がそれを阻止する。



「やめて、クズ、カス、ゴミ」

こいつの余裕な顔にムカついていつも心の中に秘めていたものを言ってしまったけれど、ひどく後悔する。

罪悪感に駆られたからじゃないし、申し訳ないと思ったからじゃない。


こいつがまたふっとわらった。




「随分言うね?クズなんて思って俺のこと見てたんだ?」
「クズでしょ。もう私に話しかけないで」



「その言葉撤回させてあげる」と言った彼は私の手を解いて、私の隣にやってきた。

やっと解放されたと思ったのも束の間、ふたたび私の手を引いて、私との距離を縮めた。
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