クズ男の独占欲に溺れて。
途中途中で唇を離して、至近距離でわらわれるとカーッとなって怒りたくなるのに、いまの私にそんな余裕は微塵も存在しないだろう。

それをこいつはきっと知っているだろう。



ニヤッとわらっているこいつの口角は上がっていて、バカにするようにわらっている薄い唇は綺麗な弧を描いていて、瞳は怪しく細まっているのに、こいつの顔面は驚くほどに綺麗だった。




「ほんと、なにすんの、」
「嫌なら逃げていいよ?ほら、この手離すから」

後頭部に添えられていた手が、指に絡められていた手が離れて、赤く染った腕が目に入った。


私はいま何にむかついているのだろう。ファーストキスを奪われたことなのか、こんな奴に捕まってしまったことなのか、わらわれたからなのか、何なのか、わからない。






「……いいの?絢瀬さん?」
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