無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
こんな心理状況でピアスを探したらとんでもないセンスのものを選んでしまいそうで、でも選んだらきっと壱はそれをつけてくれるから、恐くてもうピアスなんて選べない!帰りたい…!
そう思ってきょろきょろ壱を探したら、店先に展開されているアクセサリーを見ているようだから、たたっと駆けよった。
「決めた?」
聞かれて首を横に振る。
「かわいいのなかった」
言うと、全部お見通しみたいな目でまた静かに見下ろされて、う、と言葉に詰まった。
その時。
「あれ…もしかして壱くん?」
背後から綺麗な透きとおる声が壱の名前を呼んだので、私は振り返る。
でも振り向きざまの一瞬、
私は目を丸くして。
心臓の嫌な音を聞いて。
なんで?
だって、あの壱が。
誰に名前を呼ばれてもまともに返事をしない壱が。
私より0コンマ数秒、早く振り返ったのを見たから。
なんで、そんな、反応、早い、…。