無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
私の知らない壱が、1年以上前のそこに存在していて、その延長線上に今の壱がいる。
はは。
もしかしてもうそれって壱は私の知ってる壱から随分かけ離れた人間になってるってことなのかな。
今朝みたいに、目を合わせただけで言いたいことが伝わる、言われたことが伝わってくる、そればかりが当たり前だった頃から、遠く離れて今。
それでも。
もう帰りたい、今日は。
なんとなく途方に暮れたような気持ちで、壱を見上げたら、小さく息をついて。
「帰るか」
そう言ってくれるから、錯覚するのだ。
いつまでも、幼い頃のままでいられる今が、ここにあるような気がして。
その錯覚のなかに、ずっといたいと思うのだ。
「うん」
柔らかく微笑むと、壱は少しだけ目を見開いて、でもすぐに平常に戻った。