無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
「おはよ」
玄関のドアを開けて、実物の壱と会う。
さっき夢で会ったばかりなのに現実もこうだから、もはやすべての時間を壱に支配されている気がしてつらい。
「ん、行こ」
そんなこと知る由もない壱の言葉に頷いて、マンションの廊下を歩きはじめる。
あの日のデート以来も、こうやって普通の朝は繰り返されていた。
隣を歩く壱は、夢のなかの小さな壱と違って呑気にふわわと欠伸をするから、ちょっと油断してぼんやりしていたら、
「………っ!」
ふと、肩に触れる髪先を触られた。
「な…んだ?!」
大袈裟にびくっとしてしまった私に、壱は手を止めて一度だけ瞬きをして、聞く。
「…寝坊した?」
「は?全然です?いつもより30分早く起きましたけど?」
自慢気に言った私とそれを聞いた壱は、見つめ合ったまましばし立ち止まって固まっている。