無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
「んぅ…ん…っ」
息ができなくて苦しくて声を漏らすと、はい今呼吸してね、とでも言うように涼しい顔で壱が私の唇から離れる。
その隙になんとか酸素を取りこめば、またすぐに角度を変えて噛みつかれた。
「仁乃」
壱が私の頬に両手を添えて名前を呼ぶから、壱の静かな瞳を見る。
「大丈夫、恐くない」
そう言った壱の表情に崩れはないのに、その声だけがとてつもなく優しく、だけど切なげに掠れているから、それが愛しくて愛しくて私は目を閉じた。
このまま。
溶かされながら。
従えばいい。
思考が追いつかないなら、気持ちに従えばいい。
そう思った。
確かに、そう思った。
なのに。
なんで?
暗闇のなかで、目が合った、人。
なんで今出てくるの?
「…壱、待って」
「待たない」
「お願い待って」
強く言うと、壱が短くため息をついて、私をまさぐろうとしていた手を止めた。