無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
「ねーでもさー、そんなに好きでもおちおちしてたらほかの子に横取りされるよ?」
万里加さんの言うとおり、この2年のあいだに致命的ななにか起こる可能性だってある。
そんなことはとっくの昔に百も承知だ。
「…馬の骨にはやらね」
「取られたらどうすんの」
「さあ。たぶん殺るんじゃない」
「やっば、壱くんやっば」
言ってろ。
ため息をついて立ち上がると、ほとんど上半身をカウンターに乗せた万里加さんが、猫目を細めて言った。
「提案なんだけど、壱くんここらであたしとやっとかない?」
「話聞いてた?」
「聞いてた聞いてた、聞いたうえで言ってんの」
「ないですまじで」
「えーまじで?なんでなんで?」
「仁乃が知ったら泣く」
万里加さんを横切ってカウンター奥に引っこみ、水道で埃まみれの手を洗う。
じゃーじゃー流れる真水にさらされるやたらと大きい自分の両手をしばらく眺めた。