無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
俺の汚れもこの埃みたいに全部綺麗に流れて消えればいいのに、そうすれば俺の成長も止まるかもしれない。
そうすれば仁乃を泣かさずにすむかもしれない。
でも仁乃だっていくらガキでも少しずつは成長するんだ、免れない。
免れないよ、仁乃。
「ねー壱くん、でもさ」
妙に諦めの悪い万里加さんの声が聞こえて、視線だけ投げるとカウンターに肘をついている華奢な背中が見えた。
「はじめては痛いよ、ほんと」
「…なんの話」
「2つ上のクソガキからの一応の助言。ある程度うまくないと、仁乃ちゃんかわいそうだよ」
「猥談好きだね」
「あははは、ばれた?」
やばい女だなこいつと思いながらタオルで手を拭いていたら、万里加さんがくるり、椅子に座ったまま俺を振り返る。
「でもまじで。普通に泣くよ?」
まじめな顔で俺を見つめる万里加さんの猫目が、俺の心を見透かすみたいで時が止まった。