無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
その一瞬、俺の下で泣く仁乃の顔が脳内で形成されて思考も止まる。
全然最高だけど。はは。
「…はじめて同士とか地獄だよたぶん」
仁乃を泣かせる奴は老若男女、ぶちのめすつもりで生きてきた。
「あたしだったら、あとくされないよ」
でももしそれが、仁乃を泣かせるのが自分になったら、俺は俺をどうするつもりなんだろう。
このままいけば、どうしたって泣かせるはめになる。
好きだと言って、付き合ってと言って、ましてや指輪なんて渡して、ここから一歩踏みだせば。
仁乃の大事な大事な『幼なじみ』は、いとも容易く消え去る。
ずっと自分のまんなかにあった大事な大事なお守りが、守り続けてきた宝ものが、シャボン玉みたいに頼りがいのないものだったと知り、その膜がぱちんと弾ける瞬間を仁乃は見る。
そしてそのシャボン玉に針を刺した俺のことも見る。
仁乃は逃げるだろう。
俺の裏切りを簡単には許さないだろう。