無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験


いつもなら、とんだ野次馬魂だって言ってしまえるところなのに。


ありがたく感じるのはなぜだろう。

やわらかく感じるのはなぜだろう。


そうか。

ああ、本当に身勝手で情けないな。


たぶん、心細いんだ、私。

これから自分が手放すこと、知ってるから。



気づいてぐ、と息を飲んで、急激な鼻先の痛みに耐えていたら。



「よかったよ、ヒロインが道あやまらなくて…」



新田ちゃんが呆れたように笑って言うから、私は目を見開く。



「ヒロイン…?」



耳に引っかかった言葉を復唱してみると、なんて身になじまない言葉だろう。


異世界の、か?

違うって、ここ現実だって。



「ごめんだけど仁乃ちゃんもご存じのとおり、仁乃ちゃんはほーんと普通よ、私らからしたら」



ここにきて葛藤をはじめる私に、ため息をついた新田ちゃんが言った。


< 235 / 257 >

この作品をシェア

pagetop