無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
遠ざかる、鈍い光のなかの壱の背中。
こうして置いていかれるんだ。
やっと追いついたのに。
壱はいつも私より前にいるから。
やっと、やっと追いついたと思ったのに、今また遠くにいる。
悔しいなあ、悔しいよ、壱。
なんで私、もっと早く追いつけなかったんだろう。
――『仁乃、俺と結婚して』
あの日、壱が一番大切にしている私への気持ちを。
――『壱は、今、道を大きく踏み外そうとしている』
――『幼なじみとして、看過できないのであります』
ないがしろにしたのは、私。
冗談で必死に、必死にごまかした。
臆病で臆病で臆病で、大バカもののバカヤローは、私だ。
手遅れだなんて。
今更気づいたって。
こらえていた涙がこぼれそうになったその時。
壱を覆い隠したセピア色がゆがんで、その先に幼い私が見えた。