無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
アスファルトの上で転んだ幼い私は、
待って、待って、待って、壱、待って!
叫んで座りこんだまま泣いてる。
遠ざかっていく壱の背中は、どんどんどんどん、大きくなって、幼さを捨てていくから。
行かないで壱、お願い置いていかないでって、泣いてる。
誰もいない世界で、人目もはばからず。
うわあああああんうわあああああんって、幼いままの私が泣いてる。
その泣き声が自分の内側から聞こて、その瞬間幼い私は消えて、18歳の私が奥歯を噛んだ。
ああもう、いつまでもうだうだうだうだと、
ぴいぴいぴいぴいと、
待って待ってと駄々をこねて、
ただずっと、足を引っ張って、
座りこんだまま。
壱が振り返るのを待って。
ガキじゃないんだからさ。
それでも一筋流れてしまう涙に、かまうものかと、窓枠に足を掛けた。
鈍い光が、セピア色が、私をつつむ。
それはとてもあたたかくてやわらかくて、ずっとここにいなよと、私を抱きしめるようだけど。
さよならを告げて、私は、壱のところに行く。