無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
言いたいことそれだけ?って、涙でぼやける世界で、壱の瞳が聞く。
久しぶりに壱の心の声を聞いた私は、抑揚のない声で答えた。
「こわいよ、壱」
ついに涙で、壱の顔が見えなくなる。
「壱と恋愛なんて、こ…こわすぎ、る、よ」
「ん、こわいな」
私の背中を優しく撫でて、壱が言うから。
ようやく理解する。
「気づいてたよ、実験…、なんてしなくても、試さなくても…分かってた」
「うん」
「でも…っ、恋愛でしょ?それって、ふ…ふったりふられたりするんでしょ?そんなのこ、こわくて仕方ないから、だから…だ、から…守りたかったよ、幼なじみ、壊したくなくて、ひ、必死だったよ」
「うん」
「だって…、だって、失いたくない、壱のこと、一生」
ずっと言えなかった言葉を、言いながらちゃんと壱を理解する。
壱も同じだってこと。
――『幼なじみなんて便利な関係の効能は、たぶんとっくに切れてるし』
恐くて仕方なかったのは、きっと壱も同じだってこと。
壱は私と同じ恐怖をずっと、私より先に受けとめてくれてたって、こと。