無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
見上げる私の顔を、壱が両手でつつんだ。
涙、止まれ、今だけでいいから。
この瞬間の壱を一生、覚えていたいから。
壱、私も分かるよ。
これから壱が、なにを言うか。
だって私たち今、きっと同じこと考えてる。
「失くさせない」
そう。
「仁乃から俺を、失くさせない」
壱から私を、失くさせない。
命でもなんでもかけて、誓うよ。
だから、ばいばい、幼なじみ。
愛しそうに私を見つめる壱の、左耳のピアスがきらりと光って、それがとても綺麗に思えて。
私の知らない時間の壱をも、私は愛していけるような気がしていた。