無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
はじまりのプロポーズ
いつかの春のさなか。
ななこ先生のピアノに合わせて、ぶどう組のみんなが歌ってくれるお誕生日の歌。
歌に合わせて、手を繋ぐ私と壱の首にリボンがかけられる。
ぱち、ぱちぱち
ぱち、ぱちぱち
と、リズムに合わせて叩かれるたくさんの小さな手のひら。
嬉しそうな私の横顔を、嬉しそうに見ている横顔。
私がよろこぶことで壱がよろこぶんだと、私は嬉しくなって。
幸せはそうやって伝播するってことをはじめて知った。
そんな日もママのお迎えはちょっと遅い。
でも寂しくなかった。
隣で同じお迎えを待つ、壱がいたから。
小さなそれはもう小さな壱が、小さな赤い色のお花を、小さな私に差しだしている。
なにもかもがまだ小さな世界の、端っこが私たちのまんなか。