無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
そっと鏡の前に戻って、自分の上半身を見てみる。
ゆったりぎみのブラウンパーカー。つくづく胸ないな。
お礼をするような姿勢で今度は下半身を見てみると、適当な白いデニムのショートパンツを履いた短い脚…。
んん。
これで合ってるのか…?
ない胸と短い脚は持って生まれた素材だから置いとくとしても。
いや、いいでしょ。
壱がなに着てもかっこいいのは今にはじまったことじゃないし。
私がなに着たって壱の横にいればただのちんちくりん、考えるだけ虚しい努力でしかないし。
ふん、と上半身を上げたら、
「なにしてんの」
洗面所の入り口の壁に身体の横半分をもたれかけて、壱が私を見ていた。
びっくりして歯磨き粉を歯ブラシもろとも吹きだしそうになって、慌てて洗面所に吐く。
「人の歯磨き観察しないで!」
「いや、いつまで歯磨いてんのかなって」
「毎日これくらい磨くんです!」
「あそ」
壱はそう言って納得したらしいけど、体勢を変えずに腕を組んで私を見ている。