無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
「お、いしい…っ」
「よかったね」
伏せた目でにこりともせずに蓮華のスープを飲む壱は、スープを飲んでいるだけでもかっこいい。
壱には小洒落たレストランだとか小洒落た料理だとかは、必要ない。
壱とラーメン、それもまた眼福。
「でもこんなおいしいお店、どこで見つけたの?」
私が天津飯好きって知ってるから、選んでくれたんだろうけど。
「バイト先」
「バイト先って光太郎くんちの酒屋でしょ?」
「うん。一緒にバイトしてる大学生の男の人に教えてもらった」
へー、呟いて、天津飯をまたぱくり。
こりゃまた私の知らない壱だな、と思いながら。
高1の時から壱は、学校から近いという理由だけで光太郎くんの家の酒屋でバイトをはじめた。
たぶんそれからちょっとずつ、私の知らない壱が増えている。
バイトしてる壱、バイト仲間の大学生においしい中華料理屋を教えてもらってる壱、今日もキラリと光る左耳のピアスの穴もいつのまにか開いてたし。