無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
でもまあそういうものだから、幼なじみなんて。
私の知らない壱が増えたって深追いしない。
寂しさはあるけど、幼なじみとしては超えてかなきゃならない寂しさなのだ。
そしてそれを、壱にも知らしめないといけない。
そう、忘れかけていたけど私の実験の目的は、それなのだ。
――『俺と仁乃が、本当にただの幼なじみで、恋愛対象にならないのかどうか』
コホン、身を引き締める思いでコップに注がれた冷たい水を飲んだら、少しだけ肩が震えた。
サラリーマンのお客さんも多いこの店の冷房はそこそこ効いているらしい。ちょっと鳥肌が立つ。
まあ中華料理屋さんあるあるだ。もうすぐ5月だし。
そう思っていたら、ふわり、上から膝になにかが掛かって。
ん、とよく見たらそれは、壱の羽織っていたカーディガンで。
見上げると、いつのまにか私のそばに立っていたらしい壱が、すたすたともう私の向かいの席に戻るところ。
「え、これ」
「掛けとけば、寒いし」
そう言った壱がじ、とカウンター席のほうを少し睨んだ。