無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験
私はもう一度、膝に掛けられたカーディガンに目を落とす。
ショートパンツから出た太ももに触れるそれには、まだ壱の温度が残っていてあたたかい。
寒いなんて一言も言ってないし、そんな素振りも見せてない。ただ少し、肩が震えただけ。
そういうのを、壱は見逃さないのだ。
見逃さなかったのは、私の肩の震えだけじゃないけど。
ぐぐ、と胸が痛くなると同時に。
『『ときめいてはならない…ならない…らない…』』
頭の真ん中あたりから低くエコーのかかった私の声がズドンと響いた。
分かってるってばなにこの声。振り払いたくて頭をぶんぶん振る。
ていうかときめいてもそれは、そういうのじゃないから。
ときめきに関して言えば、私は一生壱にときめいてるから。
「ありがとう」
「別に。食べないと冷めるよ」
早くもラーメンを食べきった壱は、テーブルに肘をついてその手で頭を支えて、私を見ている。
さながら実験体のマウスを観察するみたいな低温な目つき。
…食べにくいよ。