これを愛というのなら
話したあと、蓮は。

強く私の身体を、自分の胸に引き寄せて。


「忘れなくていい。忘れちゃいけないことだ。その彼の分まで、俺が梓を愛してやる。幸せにする」


辛かったこと、話してくれてありがと。


髪にキスくれるから、溜まっている涙を、蓮のスウェットで拭こうとすると。


梓?顔上げて。と蓮の優しい声が、耳元を掠めて。

顔を上げると、指で溜まった涙を掬ってくれた。


「蓮…ありがとう」


見上げたまま言うと、当たり前だろ、と。


「惚れた女の辛かった過去も受け入れて、幸せにしようって思うのは。だから…ありがとうはいらない」


梓が怖いって言ってた真意も理解できたしな、と。


「俺との関係が崩れることが怖かったのは、俺も居なくなるんじゃないかって思ってたからじゃないのか?」


そうか!

今、蓮が言ってくれてやっと気付いた。

蓮は、彼が亡くなってから、はじめて心を赦した異性だから。


うん、きっと。と返事をすると。


「俺も、怖かったって言ったよな?梓と似てる理由なんだよ」


そんな事を突然、言い出すから。

えっ?と瞬きを何度もしている私に。


聞きたいのか?と言われて、頷いて。


瑠美さんじゃないよね?と訊くと、その前。


「先に言っとくが、相手は亡くなってないし。妊娠もさせてない」


そこだけが違う、とだけ言って、聴かせてくれた。
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